影響を受けた本の紹介~日本のデザイン―美意識がつくる未来/原研哉~
suffix_dpo DESIGNチーム
こんにちは、デザインチームのKです。
デザインを学びたいと思ったり、デザイナーを志す人には大抵インスパイアされた作品やデザイナーの存在があると思います。
私が美大を志したきっかけはグラフィックデザイナーの原研哉さんでした。原さんは有名なものでは無印良品のディレクションや、最近ではクロネコヤマトの新しいロゴマークなどを手がけた、日本のデザイン界では巨匠や大御所と呼べるような大変著名なデザイナーです。
今日は私が学生時代に読んでいた原研哉さんの「日本のデザイン―美意識がつくる未来」という本について軽く紹介してみようと思います。 原さんはこの本の他にもデザインに関する本を数多く執筆していおり、私はその幾つかを読んだことがありますが、本書を読んだ大きな感想としては、彼がいつも一貫して人の生活の本質とデザインがいかに深く関わっているかを真摯に述べているということでした。
本書はタイトルからもわかる通り、主に日本人のデザインの力をクローズアップして書かれており、日本人の繊細さや簡潔さを再認識でき、読者に日本人であることを誇らしく思わせてくれるような内容です。
日本車の信頼性や完成度の高さ、古来の日本の住居とモダニズムとの関連、阿弥衆という日本におけるデザイナーの起こり、日本由来の素材の未来への展望などを、他国の文化とも交えつつ、日本人の思想や仕事を丁寧に解説しています。
その中で私が最も興味深いと思ったのは、第二章「シンプルとエンプティ」の中でのシンプルさとはどのようなことかを扱っている箇所でした。シンプルにものごとを表現するのは簡単なようでとても難しいです。私がそれを強く実感したのは予備校で受験対策をしている時でした。シンプルかつ美しいデザインを表現するには、画面全体の地と図の関係、絞りきった配色、一本の線、一つの色まででき上がる画からは想像もつかないほど知恵と思考を凝らさなければなりません。私は寂しいからといっていつも無駄な要素をつけくわえてしまいがちで、よく講師に注意されていたものです。
本文中に私に改めてシンプルとはどういうことかを再認識させた一文があるので引用しておきます。
「資源や労力を最大限効率よく運用しようとする姿勢に、新たな知性の輝きや、形の美が見出されてきた。 これがシンプルである。」
その他に本章の中では ◯(マル)、◻︎(シカク)のフォルムが人間の本質に寄り添っていることや、複雑さの存在を前提にシンプルという概念が存在することなど、私が今まで持っていたシンプルの認識を大きく広げられた内容が多く書かれており、デザインという概念の理解への大きな助けになりました。
本全体では、原さん独自の視点から製品や広告から住居、環境など様々な切り口からデザインの意義を論じており、過去から現在、そして未来までのデザインの可能性、必要性を具体的な例を交えながら詳しく述べられております。
日本のデザイン、デザイナーの特徴などについて興味のある方はぜひ一度手に取ってみてください。